―― 二〇二二年 七月十六日 土曜日 ――
――心地よい振動。
空調が行き届いた快適なバスのシートに揺られて、わたしはいつの間にか眠ってしまったらしい。
どれくらい眠っていたんだろう。よほど熟睡していたのか、いまいち記憶がおぼつかない。
しかし、まぶたの裏側にまで射し込んでくる夏の日差しは、また夢の世界へ戻ろうと踏ん張るわたしの睡魔を容赦なく奪っていく。
『うぅ……ふあぁ……』
自分だとは思えない奇妙なうめき声。
重いまぶたをゆっくり持ち上げると、霞んだ記憶がそろそろと頭の中へにじり寄ってきた。
そうか、今はみんなで旅行中だった。わたしはこの日をずっと楽しみにしていたんだっけ。
彼氏や友達と旅行なんて初めてで、なんだか大人になったみたい。なのに出発早々寝ちゃうだなんて、もったいないことしちゃったな……。
昨晩はなかなか寝つけなかった。いつ眠りについたのかも覚えていない。
ここまでどうやって来たのかも曖昧だけれど、今のところ忘れ物もないし身支度も整っている。朝はきちんと起きて出てこれたのだろう。