行き着いたのは異世界でした

若草色の髪の彼の名前はグレン・フォードだそうだ。
彼は一度火が付いたら、なかなか止まらないタイプだったようで、目をキラキラさせながら細かく訊いて来た。
名前や年齢から始め、最終的には日本や学校、飛行機など子供でも知っているような、個人情報になんの関係もない物まで説明する羽目になったのだ。
もし、ノアが彼を止めなければ、何日質問責めにされていたかわからない。
そして、自分も知った事が幾つかある。
今、帝国暦429年だと言う事。
この帝国の名前はアイン帝国。
アイン帝国以外にも後、6つ帝国がこの世界にある事。
一つの帝国は一つの大陸の上にある事。
この世界にはスキルと呼ばれる才能が一人に一つ、稀に二つある事。
スキルは現世で言う、得意分野や才能の様に発揮される物もあれば、魔法の様な物理法則を無視した様な物もある。
そのスキルは通常、使う本人にしか見えない。
そして、この国の住民は必ずどこかしらのコミュニティに所属していなければならない。
コミュニティは現世で言う運転免許証や国籍の様な身分証明書の役割を果たしているのだ。

「君が異世界から来た事は信じる。
でも、どうやって来たんだ?」

ノアがどうしても信じられないものを無理に信じようとしているのがわかる表示で訊く。
先程、グレンがダリヤの血を一滴貰い調べたのだ。
記号が書いてあるキーボードの様な長方形の下には小さな棚があり、彼がそこから針を取り出して、渡したのだ。
チクリと一瞬痛み、血がその針を伝うと、それを素早く取り、棚に戻した。
そして、グレンがダリアが話す事を全てタイピングすると、一行毎にイエスと独りでに文字が浮かび上がった。
きっと本当だと言う意味だろう。
そして、不思議な事にダリアはこの国の文字を知らなくても、書いてある事の意味がわかったのだ。

「えっと、実はあまりわかりません。
来たと言うよりはいつの間にかいたと言う感じでしたので。」

ダリアは言いにくそうに答える。

「もしかしたら、川を通って来たんじゃない。
だって、ノアはダリアちゃんが溺れていたのを助けたんでしょ。
この森に普通人は来ないし、来たとしても奥の方にある川に着く前に僕たちが気付くでしょ。
で、ダリアちゃんは川に落ちる前は異世界にいたんでしょ。
じゃあ、原因は川にあるでしょ!」

長い間何も言っていなかったアレンは自身満々に説明する。

「じゃあ、もう一度川に入れば、戻れるって事ですね。」

ダリアは嬉しそうに手を合わせて言う。
それを聞いたノアは深いため息をつき、グレンは可笑しそうに笑っていた。

「どうしたの、二人とも?」

アレンは首を傾げて訊く。

「この寒さで泳いだら凍死するかもしれない。」

「それに、あの川結構流れ早いよね。
また溺れるかも。
あっちの世界では助けてくれる人いるのか疑問。」

二人の発言にダリアの顔は曇り、アレンは二人の頭の良さに関心していた。