行き着いたのは異世界でした

ミラが去った数分後、今度はアレンと一瞬に癖のあるボサボサの若草色のセミロングの髪と目をした少年が眠たそうに欠伸をしながら入って来た。
彼は分厚い丸い眼鏡を掛けていて、クリーム色の長袖の服と深緑のズボンはシワになっていて、首下の緑のリボンだったであろう物は解けてぶら下っている。
目の下には大きなクマがある。

「全くノアは人使いが荒い。
2日も徹夜した僕を少しは労わってくれても良いのに...」

「すまない。
余り時間は取らないから、最後に一仕事お願いだ。」

彼は不機嫌だったが、ノアの頼みに嫌々頷き、引き受ける。

「わかった。
でも、これが最後だから。」

今までの人達の反応を見るからに、皆ノアを尊敬して慕っている。
そして、ノアも彼らの事を大切に思っている。
ダリアの目にはそう映った。

「ありがとう。」

「別に...
で、僕は何をすれば良いの?」

「ああ、この子の証言の真偽を確かめて欲しい。」

ノアの言葉に彼はダリアに目を向けてから、再びノアを見てコクリと頷く。
そして、一回深く息を吸って目を開ける。
先程の寝ているか起きているか分からない生気の無い眼差しではなく、覚悟を決めたしっかりとした眼差しになっていた。
彼は胸の高さで右手で横にスライドすると緑色の薄い半透明のこの国の文字らしき記号が書いてある長方形が現れた。
その長方形の斜め上にも同じ形の何も書かれてない物が現れた。
それらは浮いていて、物体も無いように見える。
何だろう?とジッとそれを凝視していると、彼は信じられないとでも言いたげな驚いてダリアを見る。

「これが見えるのか?」

「はい。
見えますけど...」

そう答えるとその場にいる全員が目を見開いて彼女を見る。

「あの...
どうかしましたか?」

気まずそうなダリアの問いに答えたのはノアだった。

「これは誰もが一つ持っているスキルだ。
普通スキルを見る事が出来るのは所有者だけなんだが...」

「ノア、この子どこで拾って来たの?」

彼はノアに掴みかかる勢いで訊く。
そして、振り返り、

「君、名前は?
どのコミュニティに所属してるの?」

と興味津々に訊く。

「遠藤ダリアって言います。
えっと、コミュニティには入ってません。」

「そんな筈はない。
皆どこかしらのコミュニティに所属してないといけないんだ。
別に危害を加えるつもりは無いから、出し惜しみしないで答えて。」

「少し待て、グレン。
そう急かすな。」

「わかった。」

「ダリア、先程、俺たちにしてくれた話をもう一度ど言ってくれ。」

「はい。」

今日は長い一日だったなと思っていたが、まだまだ長くなりそうだ。
沢山の人に会ったが、全員の顔と名前を今日中に覚えなくてはと真面目に思った。