行き着いたのは異世界でした

数分重い沈黙が部屋を包み込む。
こころなしか、息苦しい。
その沈黙を破ったのはノアだった。
彼はコホンと咳をし、言いにくそうに口を開く。

「少し、否、大分厳しい言い方をしてしまってすまない。
怖がらせるつもりは無かったんだ。
でも、俺にも団長、そして君をここに連れて来た人としての責任がある。
だから、君が敵ではないと確信出来るまで油断できない。」

「大丈夫です。
そもそも、命を助けて貰ったのにそんな我儘言える立場じゃありませんし。」

「物分かりが良くて助かる。」

そしてまた沈黙が訪れる。
今回それを破ったのはサラサラの銀髪の髪をとエメラルドグリーンの目をした少女だ。
彼女の髪は右側から左に斜めに切ってある。
だから、右側は髪が耳の少し上までしかないのに、左側は耳の下まである。
前髪は右寄りで、水色のピンで留めてある。
彼女はボタンを全てしめた白衣を着ており、白いタイツにも似たズボンと白い短いブーツを履いている。
全身真っ白だ。
多分直ぐに汚れに気付く為だろう。
その証拠に、薬が溢れたのか、所々青や緑のシミがある。

「やあ、君は昨日のあの人だね!
気分はどうだい?」

彼女はハイテンションでまるで友人の様に気軽に話しかけて、自分の額とダリアの額に手を当てる。

「昨日より少し熱が下がったね。
でも、油断は禁物!
はい、これ薬。」

彼女は白衣のポケットから緑色の液体が入った小さな瓶を取り出した。
それをダリアに押し付ける様に渡して、話を続ける。

「そう言えば、自己紹介が遅れたね。
ボクの名前はミラ・マクリン。
医者と化学者をやっている。
歳は14。
よろしく!」

ダリアはミラのテンションに些かついて行けなかったが、

「私は...」

と自己紹介しようとしたが、それも彼女に遮られる。

「ああ、大丈夫。
君の事は知ってるよ。
遠藤ダリアだろう?
自慢じゃないが、ボクは間が良いんだ。
だから、さっき自己紹介してる時たまたまこの部屋の前を通ったんだ。
その時、君が起きたって知って薬を研究室に行って取って来たんだ。
あ、薬早く飲んで。」

ミラに急かされてこの緑色の不気味な液体を飲む。
想像通り凄く苦かった。

ミラは中身の無くなった瓶を半ば引ったくる様に取る。

「じゃ、ボクは戻るよ。
もし何かあったら、この団長に言って研究室に来て。」

彼女は嵐の様に来て、嵐の様に去って行った。
ミラがいた間、誰も何も話せなかった。
理由は彼女がずっと喋っていて、他の人が話す隙が無いのは今日初めてミラと会ったダリアにもわかった。