「あ~っ、もう、ビックリしましたね~」

視聴覚室から少し離れると、私は言葉を発した。

 やはり、女の子が急に泣き出すというのはハラハラする物だ。

 山寺先輩は、一眼レフカメラのディスプレイをただじっと見つめていた。

 村井さんは自分の話した怪談のせいで、堂本さんがケガをしたと責任を感じているみたいだ。

でも、森下さんは自分の動画の事しか考えてないといった感じだった。

 やっぱり、見た目通り私はアノ人を好きにはなれそうにない。

 それはさておき、三人は本当に幽霊を見たのだろうか?

「村井さんには悪い事聞いてしまいましたね……。でも、鏡の少女の呪いなんて本当にあるんでしょうか? そもそも、本当に鏡の少女の幽霊なんて……」

「藤城さんは、違和感……を感じない?」

先輩は急に立ち止まり、私の方をじっと見た。

全てを見透かしている様な、心の中を読まれてしまいそうな、山寺先輩の瞳にはそんな力がある。

「……違和感ですか?」

「うん……最初に話したよね、この怪談話の事を……」

「あっ、はい、えっと、確かカップルが誓いをして裏切った方は鏡の少女に引き込まれる……でしたっけ?」

「そう……怪談話にはね、決まって約束があるんだ」

「約束?」

「そう……そして話の中のルールは絶対なんだよ」

「どういう事ですか?」

「例えば……有名なトイレの怪談で手が出てきて引きずり込まれるなんていうのがあるけど……その怪談の中でトイレの手がナイフを持って刺して来たなんてなったらそれは別の話になるよね?」

「ま、まぁそうですね、それだと話変わっちゃいますよね」

「そう、それなら今回のはどうだろう、鏡に引きずり込まれそうになったならわかるけど……階段から突き落とされたってなったら……」

「別の話……って事ですか?」

「そう……だからコレは鏡の少女の仕業ではないと思うよ……」

「じゃあ……一体どうして、堂本さんはケガをしたんでしょうか?」


「さあ……もう少し調べる必要がありそうだね」

 その後、私と山寺先輩は校内で情報収集をしてみたが、これといった成果はなく、鏡詣りに関する噂は森下さんのネット動画の話の事しか出てこず、新しい情報を得る事は出来なかった。