この日のために用意していた服があった。
 
 クリーム色のヒラヒラロングスカートに、深緑のチュニックを重ねる。ブーツを合わせたいところだが、ここぞの時にと決めていたグラディエーターサンダルを履くことにした。ペディキュアを塗ったのもこのためだ。玄関にある全身鏡に映る自分の姿に満足して、二つの弁当袋が入った紙袋を手に私は家を出た。
 
 土曜日だし、普段と時間帯も違うけれども、それでも私は同じ道順をたどり、電車に乗った。降りた駅は本田の利用する駅で、ただし本田に会いに行くわけではない。
 
 真澄のことが知りたくて、真澄の面影を見つけたくて、私は度々、この町を訪れ、散策をしていた。