「そんなに付き合いが長ければ交際に発展しなかったんですか?」
「ないない。それはないって。朝から言ってるけど本当にあり得ないから」

 妙に強い否定が気になった。どうしても真澄と付き合いたくない苦い経験でもあったのだろうか。
 
 本田が語った真澄との思い出は、どれも真澄に助けられた出来事ばかりだった。小学生の頃、学校行事でハイキングに行った時、はめを外し過ぎて規定のルートを外れ、遭難しかけたこと。真澄は要所要所の木や岩などの特徴を覚えていて、規定のルートに復帰することができた。放課後、公園のジャングルジムの上でふざけて地面に落下した。足を骨折し、しかし周囲に大人の姿はなく、これも真澄が近くの民家に助けを求め、病院に緊急搬送してもらえた。