そんなもの、時と場合による。少なくとも本田と高い店に来ても、ただただ恐縮するだけだ。
 
「いやぁ……しんどいです、正直……」
「だったら、移動しよっか?」

 頼んだ料理だけを平らげ、ビールも飲み干し、さっさと会計を済ませて店を出た。
 
 そこから一時間弱ほど移動し、見慣れた駅の見慣れた店ののれんを目にした時、本当にホッとした。
 
 居酒屋いをりは、ピークの時間が過ぎていたようで待つことなく入ることができた。
 
 改めて生ビールを頼み、ジョッキで出てきた時は深くにも涙ぐんだ。スピードメニューの妙にしょっぱい枝豆も、ポテサラも舌に馴染むし、コーンバター、チキン南蛮、ポテトフライと、ど定番の料理がテーブルを占領する時の安心感といったらとても言葉では言い尽くせない。