本田に連れてこられたのは、電車で二十分ほどのターミナル駅にある商業施設内の中華料理屋だ。
 
 仕事中にちゃっかり予約をしたらしく、ウェイティングの客が数組いるにもかかわらず本田が名前を告げるだけですぐに中に通された。仕事もこれくらい要領が良ければいいのになんて考えながら本田の背中なついていく。
 
 店内は一言で荘厳だった。店の端の席に通され、座る。椅子も座り心地がいい気がする。メニューも、街角のラーメン屋のように季節のオススメメニューがラミネートされてテーブルに置かれているようなこともない。