わざわざ朝っぱらから弁当袋を渡しに行き、彼女の本田に対する気持ちをへし折ってやろうかと思ったが結果は芳しくなかった。
 
 挨拶をして、あわよくば世間話の一つでも花を咲かせて、次につなごうと思ったのに、実際は見透かさてる感が半端なく、撤退を余儀なくされた。普段ならこれで騙せていたはずなのに何が悪かったのだろう。
 
 気分が悪いまま電車に乗った。感情を押し殺すために電車の中ではフル無視を決め込んでいたのに、本田が余計なことを聞いてくるものだから、不覚にも感情が顔に出てしまった。
 
 本田がたじろぐ様を見て、反省せざるを得なかった。