「さっき説明しましたよね?」

 眉を釣り上げた表情に驚き、僕は言葉を失った。
 
 通勤電車の中で、ずっと窮屈な思いをした。会話らしい会話もなく、職場の最寄りの駅で降りると、一緒にいて誤解を招いても先輩に迷惑がかかってしまうので、と言い訳の壁を作られ、反論する間もなく、彩音は足早に先を行ってしまった。
 
 何となく追いついてはいけない気がして、途中コンビニで少しだけ時間を潰してから僕は会社へと向かった。