彼女が言うように弁当袋の受け渡しに対して社内での視線を気にするのであれば、紙袋にでも入れて中身が見えないようにしてソッと渡せばいい。机は隣同士なのだ。大して難易度の高いことでもない。
 
 彩音の行動が解せななかった。視線は自然と手元に向かい二つの弁当袋をとらえた。どちらも派手なカラーで否が応でも目につく。
 
 紙袋といえば会社の机の中に大きめの紙袋があったはずだ。帰りはあの袋に入れていこう。人目に触れないはずだ。
 
 トンネルに入り、視線を戻す。窓に僕の隣に立つ彩音の姿が映っている。スマホを手に、ジッと画面に目を落としている。