少しでも彼女と仲良くなたかったが、結論から言えば、待ち合わせの場にほんのひと時居合わせたくらいでは、彼女とお近づきになることはできなかった。挨拶するにとどまり――それもどうもと頭を下げただけで――名前すら聞くこともできないまま、そそくさと彼女はその場を離れてしまった。通勤中で時間がないのだという。
 
 それからも私の頭の中から彼女が消えることはなかった。何とか彼女と知り合いになりたい。それだけは諦められない。
 
 残念ながら、私と彼女をつなぐことができるとしたら、それは本田しかいなかった。だから本田にすがることにした。