ただ黙々と箒と塵取りを手にして、ゴミと一緒にそんな期待も廃棄する日々が続くのみだ。
 
 会社まであと五分ほどというところで栗色のショートカットの女の子の背中が見えてきた。僕の二つ下の後輩の井本彩音(いもとあやね)だ。
 
 背丈は多分、平均か平均より少し低いくらい。靴のスニーカー、ベージュの麺パン、小豆色のトレーナーというのが今日の服装。おしゃれさんらしく、あまり同じ服を見た記憶がないが、それでも僕はすぐ彼女を見つけることができる。それくらいよく彼女を観察している。