私はこの琉一の"さんきゅ"がたまらなく好きなのだが、朝は忙しい。"さんきゅ"の余韻に浸る間もなく、琉一は私に背を向けて、じゃあな、と手をヒラヒラさせて去っていってしまう。琉一とは乗る電車の方向が逆なのだ。
ホームに立ち、私は毎日必ず電車を一本スルーする。まだ職場に向かうには時間が早いし、何より向かいのホームに立つ琉一の姿を見ていたいから。
ホームに立った琉一はただひたすらにスマホの画面に目を落としている。一度だって私が向かいのホームに立って、琉一を見ていることに気づいたことはない。でも――それでいいのだ。私は無防備な琉一を見ていたい。少し髪の毛が伸びてきたなぁとか、今日のネクタイ似合ってないなぁとか、ちょっと太ったんじゃないかとか好き勝手に独り言を言いながら。
私は一秒でも長く琉一を見ていたい。
ホームに立ち、私は毎日必ず電車を一本スルーする。まだ職場に向かうには時間が早いし、何より向かいのホームに立つ琉一の姿を見ていたいから。
ホームに立った琉一はただひたすらにスマホの画面に目を落としている。一度だって私が向かいのホームに立って、琉一を見ていることに気づいたことはない。でも――それでいいのだ。私は無防備な琉一を見ていたい。少し髪の毛が伸びてきたなぁとか、今日のネクタイ似合ってないなぁとか、ちょっと太ったんじゃないかとか好き勝手に独り言を言いながら。
私は一秒でも長く琉一を見ていたい。