ボロボロと流れる涙を止めることができない。

この10年間は何だったんだろう。
一生懸命に結衣を育ててきたつもりなのに・・・
私の子育ては間違っていたんだろうか?

たとえシングルマザーでも肩身の狭い思いはさせない。私が2人分愛してあげるからって生まれたばかりの結衣を抱きしめたのは、私の独りよがりだったの?

私はいつも結衣だけを見てきた。
初めて朝まで眠ってくれた日。
リビングのテーブルでつかまり立ちをした日。
初めて歩いた日。
「ママ」って呼んでくれた日。
夜泣きが酷くて朝までドライブしたことだってあった。
結衣のことは何でも知っていると思っていたのに。

ピコン。
大樹先生からのメール。
『結衣ちゃんを見つけた。無事だから、安心して。もうすぐ帰るから』

はぁー、良かった。
このまま帰ってこなかったらと思うと、生きた気がしなかった。

やっと一息つき、冷めてしまったコーヒーを口に運んだ。
「苦っ」
普段からブラックを飲むのに、今日のコーヒーは苦い。
まるで今の気持ちみたい。

冷めてしまったコーヒーを一気に流し込み、溢れてしまった涙を綺麗に拭いた。
私は母親なんだから、結衣の前で泣き顔は見せられない。