「杉本さん、ちょっといいかしら?」
「はい」

体調不良で早退してから1週間。
幸いインフルエンザではなかったため、私は1日だけ休んで勤務に戻ることができた。
大樹先生にはメールでスープのお礼を言っただけで、まだ会うチャンスがない。
何しろ周囲の声がうるさくて、今は何もできない状態になっている。
本当に女子って噂話が大好きで、困ってしまう。

「杉本さん。悪いけれど、先日のお休みの代わりに明日の勤務お願いできないかしら?」
え?
「明日ですか?」
「そうなの」

明日は土曜日か。
困ったな。
こんな不規則な勤務でも、私は今まで土日のお休みをもらっていた。
せめて学校がお休みの日には結衣と一緒にいてあげたくて、無理を言っていた。
それに、明日は映画に行く約束の日。
結衣だって楽しみにしているはず。

「代わりに勤務に入ってくれた人に休みをあげたいし」
「はあ。でも、明日は」
「代わりに今日の夜勤は私が変るから。お願いできないかしら?」
ここまで言われると断れない。
普段から師長には無理を聞いてもらっているし、元々私の早退と突然のお休みがすべての原因。そう思ったら何も言えない。
「わかりました」
そう答えるしかなかった。

結衣には謝って映画を別の日にしてもらおう。
その代わりに、今日は何か結衣の好きなものを作ってあげようかな。
まずは買い物に行って、夜勤で帰ってこないと思っている結衣を驚かせなくちゃ。
さっきまで明日の勤務でブルーになっていたくせに、夜勤がなくなって結衣と過ごせるとわかった途端ウキウキしている私。
単純だな。なんて思いながら、私は足取りも軽くロッカールームへと向かっていた。