大樹先生に会ってから、夜出歩くのは我慢していた。
時々希良々ちゃんの家に行くことはあっても、なるべく家にいるようにしていた。
でも、今日は無理。
今日は学校で嫌なことがあった。
もうすぐ父の日だねって話になって、「結衣はパパいないから関係ないね」って。
「そんなことない、パパはいるよ」って言っても、嘘つきだって言われて、「結衣のママは不良だった」なんて言われたから喧嘩になった。
悔しくて悲しいけれど、ママには言えない。
こんな日は1人で家にいるのが嫌で、街に出た。
コンビニに行ったり、24時間営業のドラッグストアを覗いたりして11時を回った頃、
「ねえ君」
急に声をかけられた。
そこにいたのは、お巡りさん。
マズイ。そう思っても体が動かない。
どうしよう、どうしよう。
頭の中が空回りしている。
その時、
「結衣ちゃん」
遠くの方から呼ばれた。
あ、大樹先生。
「こら、1人で行くなよ。迷子になるぞ」
ええ?
「すみません。うちで預かっている子なんです。僕は」
と、名刺を差し出す。
「ああ、そうだったんですか。小さな子が1人でいたので驚きました」
お巡りさんはすぐに去って行った。
「お腹すいた?何か食べる?」
「いらない」
なんだかとても恥ずかしい。
居心地が悪くて逃出したいのに、大樹先生は側を離れずついてくる。
仕方なく、近くのベンチに座った。
ああそうだ。ママのおにぎりを持ってきたんだった。
「食べますか?」
「うん、ありがとう」
「いただきます」
三角でも俵型でもないまん丸のおにぎり。
真っ黒な海苔で覆われた中に色んな具が入っていて、私も大好き。
大樹先生も、旨い旨いとおにぎりを平らげた。
しばらくして、真面目な顔をした大樹先生。
「小学生が、1人で出歩く時間じゃないぞ」
「・・・」
「何かあった?」
「・・・」
返事はしなかった。でも、涙が流れていた。
ポンポンと頭を撫でられる。
人前で、こんなに大泣きしたのは初めて。
私が泣いたらママが悲しむから、我慢していた。
「結衣ちゃんはもっと泣けばいいよ。ママだってその方が喜ぶと思うよ」
「そうかなあ」
ママには心配をかけたくないのに。
「誰が一番結衣ちゃんのことを心配していて、大切に思っているかわかるだろ?」
「・・・ごめんなさい」
「それは、ママに言いなさい」
いつも美味しいママのおにぎりが、今日はちょっとだけ塩っぱかった。
時々希良々ちゃんの家に行くことはあっても、なるべく家にいるようにしていた。
でも、今日は無理。
今日は学校で嫌なことがあった。
もうすぐ父の日だねって話になって、「結衣はパパいないから関係ないね」って。
「そんなことない、パパはいるよ」って言っても、嘘つきだって言われて、「結衣のママは不良だった」なんて言われたから喧嘩になった。
悔しくて悲しいけれど、ママには言えない。
こんな日は1人で家にいるのが嫌で、街に出た。
コンビニに行ったり、24時間営業のドラッグストアを覗いたりして11時を回った頃、
「ねえ君」
急に声をかけられた。
そこにいたのは、お巡りさん。
マズイ。そう思っても体が動かない。
どうしよう、どうしよう。
頭の中が空回りしている。
その時、
「結衣ちゃん」
遠くの方から呼ばれた。
あ、大樹先生。
「こら、1人で行くなよ。迷子になるぞ」
ええ?
「すみません。うちで預かっている子なんです。僕は」
と、名刺を差し出す。
「ああ、そうだったんですか。小さな子が1人でいたので驚きました」
お巡りさんはすぐに去って行った。
「お腹すいた?何か食べる?」
「いらない」
なんだかとても恥ずかしい。
居心地が悪くて逃出したいのに、大樹先生は側を離れずついてくる。
仕方なく、近くのベンチに座った。
ああそうだ。ママのおにぎりを持ってきたんだった。
「食べますか?」
「うん、ありがとう」
「いただきます」
三角でも俵型でもないまん丸のおにぎり。
真っ黒な海苔で覆われた中に色んな具が入っていて、私も大好き。
大樹先生も、旨い旨いとおにぎりを平らげた。
しばらくして、真面目な顔をした大樹先生。
「小学生が、1人で出歩く時間じゃないぞ」
「・・・」
「何かあった?」
「・・・」
返事はしなかった。でも、涙が流れていた。
ポンポンと頭を撫でられる。
人前で、こんなに大泣きしたのは初めて。
私が泣いたらママが悲しむから、我慢していた。
「結衣ちゃんはもっと泣けばいいよ。ママだってその方が喜ぶと思うよ」
「そうかなあ」
ママには心配をかけたくないのに。
「誰が一番結衣ちゃんのことを心配していて、大切に思っているかわかるだろ?」
「・・・ごめんなさい」
「それは、ママに言いなさい」
いつも美味しいママのおにぎりが、今日はちょっとだけ塩っぱかった。