家に帰ると、ママが作っていってくれた大きなおにぎりが、テーブルに置いてあった。

こんな生活をするようになったきっかけは2ヶ月前。
看護師のママが救急病棟へ異動になったのが始まり。
それまでは外来の検査室で夕方の6時には必ず帰ってきていたのに、夜勤や残業があるようになり夜1人になることが増えた。
ママが無理して土日のお休みを取っているのはわかっていたし、私の為にずっと我慢してきているのも知っている。だから、平気なふりをした。
それでも夜1人なのが寂しくなって近くのコンビニへ行くようになり、希良々ちゃんに出会った。
「また会ったね」
え?
何度目かに声をかけられた。
「1人?」
「うん。ママが仕事で帰ってこないの」
「そう、私も一緒。ママがお店をやっていて夜は仕事でいないの」
「そうなんだ」
「私は希良々」
「私は結衣」
こんな時間に話す人がいるのがうれしかった。
「家に来る?」
え?
急に誘われて驚いたけれど、躊躇いはなかった。

希良々ちゃんの家は同じアパートの3部屋向こう。
こんなに近くにいて会ったことないのが不思議だなと思ったら、希良々ちゃんはこの春引っ越してきたばかりだと聞かされた。

「どうぞ」
と、出されたココア。
小さなマシュマロが浮かんでいて、
「美味しい」
「よかった」

これが始まりだった。