「美咲せんせー。おはよーございまーす!」
「おはよう。たかし君。」
自転車を走らせ幼稚園に着くと、担任の美咲先生が園児たちを迎えて挨拶しているのが見えた。
「美咲せんせー。おはようございます!」
「千尋ちゃん。おはよう!可愛いお洋服着てるね〜。」
先生は、千尋の着ているピンクのリボンが付いている洋服を見て、褒めてくれた。
「へへっ。この間ね、ママとお買い物に行った時、買ってもらったのー!」
「へぇ〜。良かったね〜。」
「あ!ちひろちゃんだぁ!」
小さな女の子の声がして振り向くと、そこには千尋の友達のなつちゃんとお母さんがいた。
「なっちゃん、おはよー!」
千尋は、なつちゃんを見つけると嬉しそうに手を繋いで教室の中へ入っていった。
「安井さん。おはようございます。」
「おはようございます。美咲先生。あら、千尋ママ。」
「おはようございます〜。いつも千尋と仲良くしていただいてありがとうございます。」
「あ〜。良いのよ〜。なつも楽しそうで、助かってるわ〜。」
笑顔で答えてくれるなつちゃんママ・貴子さんは、幼稚園に入ってからの初めてのママ友だ。
貴子さんから、ほのかに香るローズの香水の匂いがして、上品だけど奥ゆかしい雰囲気で、他のお母さん達とは少し違っていた。
だけど、私は彼女の上品な雰囲気がとても好きだった。
「はい。ありがとうございます。では、私はこれで。」
私は、ぺこりとお辞儀をすると自宅へと続く道を歩き出した。