ジャスミンの香りが、ふわりと舞い届いた。

この香りは、毎夜私を眠りへ誘う。

本当はまだ眠りたくない。数度の強いまばたきでは眠気に勝てなくて、私は目を擦り意識を繋ぐ。

チラリとこちらを窺ったルカが、苦笑を浮かべていた。


「昨日、接続部が痛いと仰ってましたが、今は……?」

「ん……。平気」

「お嬢様、その日私の目を盗んで立ち上がったりしてたでしょう? だから、ここに負担がかかったんですよ。あれほど、無茶は駄目だと教えていますのに……」

「知ってたの?」

「それくらいわかります」


カチ、カチ、

小さな音が膝部で弾ける。壊れ物を扱うルカの指先。それがふと、神経がキチンと通っている場所に触れ、ルカの温度が伝わる。

こんな時、私は少しだけ寂しくなった。

私の両足は、膝から下……つくりもの。

義足は特注の陶器製。

生きてない。何も感じない。

……でも、確かに私をかたどる身体の一部。