「それで? 依頼の内容は?」


朝日に輝くアイスブルーの瞳は、No.633のブロンド乙女とよく似ていた。名前云々はともかく、ドール本体の子細は頭に入っている。そう、全てのアッシュベリードールのカルテがフェリルの頭の中にはあるのだ。


「両頬に薄い縦ひびが出現したそうです」

「両頬に……縦のひび」


“彼女”が住んでいるのはドレス専門店――沢山の女性がパーティードレスをオーダーしに集まる場所。新作のドレスが発表されると必ず、それを着て店に立つ。

――最高のモデルに最先端のドレス。これ以上の宣伝効果はない。No.633は、マネキン人形として店にいる。


「《Birthday》かしら……」

「どうでしょう。泣いているように見えるので困っている、とは仰ってましたが……」

「新しいドレスを着て泣くなんて。ウェディングドレスなら嬉し泣きかな? って分かるけど」

「……」


フェリルは人差し指を唇にあて、じっと考えた。