それからしばらくして、大学構内で彼と全く同じ身なりの男性を見かけた。そばに近寄り視線を向けてみたけれど、彼は当然のように見ず知らずの女を見るようにして通り過ぎて行った。近くにいた友達からは、「神木」ではなく「鈴木」と呼ばれていた。
鈴木と呼ばれていた彼からは、穏やかな表情も、癒されるような雰囲気も感じられない。
「神木さん。彼の体借りてたの?」
困った人だね……。そう言って笑うことで、私は悲しみを打ち消すようにしながら前に進んだ。
たくさんの話を聞いてもらった。沢山慰めてもらった。沢山元気づけて貰った。それを無駄にしちゃいけないよね。
空を見上げる。神社から見上げた空よりもずっと大きい空だ。両手を上げて、深く空気を吸い込む。
「何やってんの?」
やって来た幸恵がからかうように笑うから、幸恵の手を取ってあの時と同じように万歳した。
「こうしてると元気が出るの」
そう言う私の言葉に関心を持ったのか、幸恵も自ら両手を上げている。
「神木さん」
小さく漏らした名前に、幸恵が反応したけれど笑って誤魔化した。
鈴木と呼ばれていた彼からは、穏やかな表情も、癒されるような雰囲気も感じられない。
「神木さん。彼の体借りてたの?」
困った人だね……。そう言って笑うことで、私は悲しみを打ち消すようにしながら前に進んだ。
たくさんの話を聞いてもらった。沢山慰めてもらった。沢山元気づけて貰った。それを無駄にしちゃいけないよね。
空を見上げる。神社から見上げた空よりもずっと大きい空だ。両手を上げて、深く空気を吸い込む。
「何やってんの?」
やって来た幸恵がからかうように笑うから、幸恵の手を取ってあの時と同じように万歳した。
「こうしてると元気が出るの」
そう言う私の言葉に関心を持ったのか、幸恵も自ら両手を上げている。
「神木さん」
小さく漏らした名前に、幸恵が反応したけれど笑って誤魔化した。