秋の気配など微塵も感じられない九月の終わり。ここは、変わらずの景色を保ちつつも、気温や人の移り変わりは否めない。高く聳え立つ自身の体は、もうずいぶんと老いてしまい、あちこちガタがきていた。病気にならないよう気を付けてくれている神主の三上さんが、どれほど私のことを大切にしてくれているのかよく解ってはいても。時間という長い歴史を越えてきた体は、若者のようにはいかない。この先は、春を越えて青々とした緑を芽吹かせる周囲の草花に、羨む心よりも、見守り大切にしたいという思いで寄り添っていきたい。
 ここへやってくる人間のうちの一人。そう、彼女のことも。私は、ずっとずっと見守り続けていきた。