そう、懐かしげに。
しかも、たった今見てきたかのように
話しながら。

旅の過程で集めたという、
希少な鉱石や、岩絵具を取り出し。
見せてくれた。

姫の心と体は、すでに前のめりに成って、
覗き込んでいる。

多種多様な色彩と、大小の石が、
可愛らしいガラスの小瓶に詰められ。
キラキラ。

丁寧に仕切られた木箱の中に、
標本のように収められている。

一つ一つの小瓶の中に、それぞれの風景と
小さい世界達が、ピッタリ寄り添って収まっている。

小さな陳列箱に、びっしりと、順序立って整列している。
元絵描きの感性と規則にのっとって、美しく。

 夜空輝の瑠璃  月長  犬牙  ざくろ  閃光蛍  絹雲の源
 蜜星  黒煙  十字斧  銀綺羅  苦土蛭  幻魔火鳥  
 ヒカリゴケ  雪の頂  黒耀  鬼火不知火 黝輝  あられ
 魔眼雷管  幻影水晶  煙水晶  山入り水晶  鰐水晶  松茸水晶  
 虹水晶  油水晶  赤鉄  藍宝  紅玉髄  瑪瑙  
 藍銅  金剛  蒼玉  孔雀  虎目  猫乃目  
 魚埜眼  賢者  蜂蜜  金銀雲  葡萄玉の滴  透明石膏  
 逆さ淡富士  異極方鉱  乱れ桃  鱗  直閃天球

と、鉱石(いし)()も。
小世界たちの銘が、石の星々が、静かに広がっている。