自分自身の心の具合や、動きですら、
よく解らない、のに。

他者の。
しかも、ころころ移り変わる心模様なぞ、
(ハナ)っから把握できないし、期待もできない。

理解しようとするコトに、さほど意味も無い。
と、気付いた姫は。
「好き勝手にやろう」
と。岩絵具創りと絵に、のめり込んだ。

姫は独り、学ぶ。
藩の書庫には、絵具や絵、石や岩に関する書物が増えた。

旅商人に教えてもらうまでは、
石や貝殻を砕いて創られる絵具が在るなんて、
考えてすらいなかった。

いや、そもそも。
絵は、人が描いているのだ、という事も、
想像していなかった。

絵というものは、
誰も知らない太古の昔から、
ずっとドコか、ヒッソリとした場所に在り続け。

ある時、人々が勝手に持ち出して来た。と
いう程度にしか、思っていなかった。