6階にある洋風食堂。まわりは家族連れや恋人同士などで賑わっている。
ここなら騒がしいから多少の話し声くらいは問題ないだろうと連れてこられたけれど、1人でぼそぼそ口を動かしてたらやっぱりおかしいと思うんだけど……。

「ここから出られないんだ」
と、誠一郎は言った。
そう言った時、ほんの一瞬、寂しそうな表情が漂った気がしたけれど、
「あまりに暇すぎて誰かと会話でもできないかと思っていたら、君がやってきたという訳だ」
「私は暇つぶしですか……」
私はなんだか気が抜けて、ため息を吐いた。
それに、もうひとつ、気になることがあった。
その顔を、どこかで見たことがあるような気がするんだけど、思い出せないのだ。
「それり早く食べたら土うだ?せっかくのビーフシチューが冷めてしまう」
「は、はい」
じつはものすごくお腹が空いていたのを見透かされた気がして、ちょっと恥ずかしくなる。