半信半疑で人混みを潜り抜けて行くと、本当にさっきの女の子がいた。
お母さんに手を引かれて、嬉しそうに昇降機に乗り込もうとしているところだった。
「お客様、お待ちください!」
私は手を伸ばして呼び止め、
「あれ?さっきのお姉さん」
キョトンとする女の子に、息を切らしながら、髪飾りを差し出した。
「はい、これ、落とし物」
「まあ、わざわざどうもありがとうございます」
「お姉さん、ありがとう!」
笑顔で手を振って昇降機に乗るふたりに私は手を振って、
「あの……」
後ろを向くと、彼の姿はもうどこにもなかった。