「立石さんっ!」
怒りの声に、私は力なく顔を上げた。
「何度言えばわかるの。この商品の説明をする時はお客様に……って聞いてる?」
「はい……」
「もういいわ。そこ片付けておいて。まったく、ちょっと成長したと思えばこれだわ。しっかりしてちょうだい」
妙子は息を荒くして怒りながら去っていった。
昨日の夜は寝られなかった。

『香代子に出会えてよかった。会社も俺が心配する必要もなさそうだ。もう思い残すことは無いよ』

あれは、どういう意味だったのだろう。
誠一郎は本当に消えてしまったのだろうか。
もう二度と会えないのだろうか。
せっかく、気持ちを伝えたばかりだったのに。
もっともっと話したいことがたくさんあったのに。
幽霊に恋をしているだなんて、おかしいけど、絶対普通じゃないけど、そんなことどうだっていい。一生結婚できなくてもいい。
だから、もう一度、誠一郎さんに会いたい。

「ねえ、誠一郎さん、いつもみたいにふらっと出てきてよ……っ」