翌朝。
「……なにこれ?」
更衣室のロッカーを開けた妙子が、眉をひそめて言った。
「どうしました?」
妙子の手には、差出人の書かれていない白い封筒が乗っていた。
中の便箋には一言、

『あなたのことが好きです。』

「…………」
盗難騒動を起こしてまで気を引こうとした幽霊さんの恋の相手は、妙子さんだったらしい。
「なにこれ。怖いんだけど」
妙子は気味悪そうに呟きつつ、でも捨てはせずに、封筒に戻して鞄にしまった。

幽霊さん……。
手紙で好きな人に気持ちを伝えるのはいいと思うけど、ここ、女子更衣室ですよ……?

その後、妙子と揃って売り場に向かうと、なんだか騒がしい。
もしかしてまた盗難が?と思えば、
「えっ、盗まれた物が全部返ってきた!?」
今朝、すべての階の売り場に確認したところ、ひとつ残らず盗まれた物が元に戻っていたとか。
「言っただろう。明日にはすべて解決していると」
隣で誠一郎が微笑み、私ははあ、と感心しながら頷いた。
この人、ほんとに何者なんだろう……。