「香代子ちゃん……」
と、ふいに弱々しい声がして、私はハッと我に返った。
「さっきから、誰と話してるの？誠一郎さんって誰のこと？」
「あ……」
そうだった。話についていくのに必死で、麻美には誠一郎の声が聞こえていないということを忘れていた。
「そ、それは……」
私はためらいながら、でも、麻美も正直に打ち明けてくれたのだからと、思いきって話すことにした。
「じつは、前から話していた誠一郎さんって……」
誠一郎のこと、盗難騒動のことをまとまりがないながら懸命に話し、
「え？え？誠一郎さんが幽霊で幽霊の噂が本当で盗難の犯人が誠一郎さんの部下？」
簡潔にまとめられた麻美の言葉に、こくりと頷くと、
「え、ごめん、全然意味がわからないわ」
と困惑した表情で言われた。
「そうよね、私もついていけてないもの……」