休憩室を出て、私はつい周りをキョロキョロと見回した。
さっきから、誠一郎の姿が見えない。いや、べつに会いたいとかいうわけじゃないんだけど……
『気が散るから、人の周りをうろちょろするのはやめてください!』
つい、勢いあまって、そう言ってしまったのだ。
でもやっぱり言いすぎたかも……と少し後悔していた。
「ごめん、麻美ちゃん、先に行っててくれる?」
「えっ?うん」
麻美は不思議そうにしながら階段を下りていった。
私はすうと息を吸って、宙に呼びかけた。
「誠一郎さん」
「なんだ?」
すぐに返事が返ってきて、私はがくりと項垂れる。
「やっぱりいたんですね……」
「そろそろ考え直してる頃かなと思ってな」
読まれていた……。
「さっきは、ごめんなさい。ここはあなたの家みたいなものだし、あなたがどこにいようと自由なのに」
「俺もちょっと遊びが過ぎたかなと思っていたところだ」
「やっぱり遊んでたんですね……」
「香代子見てるとおもしろいから」
おもしろいって、人をオモチャみたいに……。
「だいたい、婦人用のハンカチなんて興味ないでしょう。なにをあんなにじっと見てたんですか?」
「並べ方」
「な、並べ方?」
と誠一郎は真面目な顔で言った。
「陳列の仕方ひとつとっても、細かなところに人の性格が出るものだ。妙子さんは几帳面、麻美さんはマニュアル通り、香代子は雑だな」
「雑ですか……」
そしてなぜ私だけ呼び捨て?
「何事も経験だ」
「はあ」
ひょっとして、星野百貨店の店員さんだったのかな。だとしたら、やっぱり、この場所に何か未練があるのだろうか。
ますます謎は深まるばかりだった。
さっきから、誠一郎の姿が見えない。いや、べつに会いたいとかいうわけじゃないんだけど……
『気が散るから、人の周りをうろちょろするのはやめてください!』
つい、勢いあまって、そう言ってしまったのだ。
でもやっぱり言いすぎたかも……と少し後悔していた。
「ごめん、麻美ちゃん、先に行っててくれる?」
「えっ?うん」
麻美は不思議そうにしながら階段を下りていった。
私はすうと息を吸って、宙に呼びかけた。
「誠一郎さん」
「なんだ?」
すぐに返事が返ってきて、私はがくりと項垂れる。
「やっぱりいたんですね……」
「そろそろ考え直してる頃かなと思ってな」
読まれていた……。
「さっきは、ごめんなさい。ここはあなたの家みたいなものだし、あなたがどこにいようと自由なのに」
「俺もちょっと遊びが過ぎたかなと思っていたところだ」
「やっぱり遊んでたんですね……」
「香代子見てるとおもしろいから」
おもしろいって、人をオモチャみたいに……。
「だいたい、婦人用のハンカチなんて興味ないでしょう。なにをあんなにじっと見てたんですか?」
「並べ方」
「な、並べ方?」
と誠一郎は真面目な顔で言った。
「陳列の仕方ひとつとっても、細かなところに人の性格が出るものだ。妙子さんは几帳面、麻美さんはマニュアル通り、香代子は雑だな」
「雑ですか……」
そしてなぜ私だけ呼び捨て?
「何事も経験だ」
「はあ」
ひょっとして、星野百貨店の店員さんだったのかな。だとしたら、やっぱり、この場所に何か未練があるのだろうか。
ますます謎は深まるばかりだった。