「そんなこともできるんですか!?」

 柚香が顔を輝かせ、滝井は嬉しそうに頷いた。

「もちろん! 情報通信技術はまだまだ可能性を秘めている。ITはもっと人の役に立てるはずだ。俺は困っている人の課題を見つけてそれを解決したいと思って、いろんなアプリを開発してきたんだよ」

 そう語る滝井の表情は誇らしげだ。

「すごいです……。もしそんなシステムができたら、飯塚さんは本当に必要になったときだけ田んぼに来ればよくなりますよね」
「ああ。それに、“田んぼオーナー”ってシステムがあるのは知ってる?」
「それは……初耳です」

 滝井は右手の人差し指を立てて説明を始める。

「まず、一口いくらってお金を払ってオーナーになるんだ。米作りは地元の農家に委託することも可能だし、指導を受けながら自分たちで農作業をすることもできる。そういう人たちにも利用してもらえそうなシステムだ。その飯塚さんだけでなく、田んぼオーナーにも売り込めば、もっといろんな人に使ってもらえるかもしれない」

 滝井は熱のこもった眼差しで柚香を見た。

「ぜひその飯塚さんって人を紹介してほしい」

 滝井に言われて、柚香は「あ」と右手を口元に当てた。紹介したくても、飯塚の住所も連絡先もわからない。

 柚香の表情が曇ったのを見て、滝井が怪訝そうになった。

「どうしたの?」
「飯塚さんの連絡先……わからないんです」
「えっ」

 滝井の表情がみるみる残念そうになり、柚香は厨房で椅子に座っている獅狛を見た。

「あの、獅狛さん、飯塚さんの住所って……わからないですか……?」

 獅狛は右手を顎に当てて考える仕草をしたが、すぐに「わかると思います」と答えた。

「ホントですかっ?」
「はい。今すぐには無理ですけど」

 そう答える獅狛に滝井が言う。

「連絡先がわかったら、飯塚さんに『滝井が連絡してください』って言ってたって伝えてください。利用者が増えれば増えるほど、コストを分散させられますし、県の農業振興プロジェクトから補助金を出してもらえるかもしれない。そうすれば、より低価格で利用できるし、農家の皆さんの役に立てるはずです」

 飯塚の負担が少しでも軽くなるかもしれない。それを思うと柚香は嬉しくなった。そんな彼女の明るい表情を見て、滝井は照れたように笑う。