柚香はエプロンを着けて、抹茶ババロア作りに取りかかった。
まずは昨日、頭の中でイメージした通り、抹茶とグラニュー糖をボウルに入れて、泡立て器ですり混ぜた。そこに卵黄だけを加えてさらに混ぜる。鍋に牛乳を入れて八十度に温め、ボウルに少しずつ加えて丁寧に混ぜた。それを小鍋に戻し、弱火にかけながら、今度はヘラでよく混ぜるのだ。そうして炊きあがったら火を止めて、ふやかした板ゼラチンを加えてよく溶かす。最後は口当たりのために裏ごしをして、ボウルに入れた。それを氷水を入れた大きめのボウルに浸けて、粗熱を取る。
「うわっ、いい匂いだな」
奏汰がくんくんと匂いを嗅ぐ仕草をした。その子どもっぽい仕草が憎めず、柚香は苦笑した。奏汰は柚香の手元を覗き込んで言う。
「それでできあがり?」
「まだです」
「洗い物を手伝いますよ」
獅狛が言って、汚れた小鍋と泡立て器、ヘラを洗い始めた。
「ありがとうございます」
柚香は棚から新しいボウルを取って、冷蔵庫の生クリームを入れた。それを泡立て器で六分立てにして、先ほどの冷ましていたボウルに加えて混ぜた。それを冷蔵庫で冷やし固めるのだ。
「これでババロアはできあがりです。固めている間にトッピングを作ります」
「俺が買ってきた白玉粉を使うの?」
「はい」
柚香はボウルに白玉粉と粉砂糖を入れて、水を加えながら、耳たぶくらいの固さになるまでこねた。それを二センチくらいの大きさに丸める。柚香が鍋に湯を沸かしているのを見て、奏汰が頬杖をつきながら話しかける。
「小学校の家庭科の授業で白玉団子を作ったことがあるな」
「ホントですか? 私もです」
「でも、俺はなにもやってないんだ。女子が全部やってくれたから」
「私たちの班は男子も女子も協力していましたよ」
そんな思い出話をしながら、柚香は丸めた団子を沸騰している湯に入れた。そして、浮いてきたものから冷水に取る。あとはつぶあんと柚の皮と一緒に、給仕する前に抹茶ババロアに飾り付ければいい。
「できました! いつでもお客さまをお迎えできますよ」
「お客さまならもう来てるよ~」
奏汰が人差し指で自分の顔を指した。
「仕方ありませんね」
獅狛が呆れたように言って、急須に手を伸ばした。
「今日は渋みが少なく、香りが弱めの深蒸し茶をお出ししましょう。その方が、柚香さんの抹茶ババロアをより楽しんでいただけると思います」
柚香が見ている前で、獅狛は三人分の湯飲みを用意して、いつものようにお湯を注いだ。いつもと同じ急須を使うのかと思ったら、彼は見たことのない深い緑色の急須を取り出した。
まずは昨日、頭の中でイメージした通り、抹茶とグラニュー糖をボウルに入れて、泡立て器ですり混ぜた。そこに卵黄だけを加えてさらに混ぜる。鍋に牛乳を入れて八十度に温め、ボウルに少しずつ加えて丁寧に混ぜた。それを小鍋に戻し、弱火にかけながら、今度はヘラでよく混ぜるのだ。そうして炊きあがったら火を止めて、ふやかした板ゼラチンを加えてよく溶かす。最後は口当たりのために裏ごしをして、ボウルに入れた。それを氷水を入れた大きめのボウルに浸けて、粗熱を取る。
「うわっ、いい匂いだな」
奏汰がくんくんと匂いを嗅ぐ仕草をした。その子どもっぽい仕草が憎めず、柚香は苦笑した。奏汰は柚香の手元を覗き込んで言う。
「それでできあがり?」
「まだです」
「洗い物を手伝いますよ」
獅狛が言って、汚れた小鍋と泡立て器、ヘラを洗い始めた。
「ありがとうございます」
柚香は棚から新しいボウルを取って、冷蔵庫の生クリームを入れた。それを泡立て器で六分立てにして、先ほどの冷ましていたボウルに加えて混ぜた。それを冷蔵庫で冷やし固めるのだ。
「これでババロアはできあがりです。固めている間にトッピングを作ります」
「俺が買ってきた白玉粉を使うの?」
「はい」
柚香はボウルに白玉粉と粉砂糖を入れて、水を加えながら、耳たぶくらいの固さになるまでこねた。それを二センチくらいの大きさに丸める。柚香が鍋に湯を沸かしているのを見て、奏汰が頬杖をつきながら話しかける。
「小学校の家庭科の授業で白玉団子を作ったことがあるな」
「ホントですか? 私もです」
「でも、俺はなにもやってないんだ。女子が全部やってくれたから」
「私たちの班は男子も女子も協力していましたよ」
そんな思い出話をしながら、柚香は丸めた団子を沸騰している湯に入れた。そして、浮いてきたものから冷水に取る。あとはつぶあんと柚の皮と一緒に、給仕する前に抹茶ババロアに飾り付ければいい。
「できました! いつでもお客さまをお迎えできますよ」
「お客さまならもう来てるよ~」
奏汰が人差し指で自分の顔を指した。
「仕方ありませんね」
獅狛が呆れたように言って、急須に手を伸ばした。
「今日は渋みが少なく、香りが弱めの深蒸し茶をお出ししましょう。その方が、柚香さんの抹茶ババロアをより楽しんでいただけると思います」
柚香が見ている前で、獅狛は三人分の湯飲みを用意して、いつものようにお湯を注いだ。いつもと同じ急須を使うのかと思ったら、彼は見たことのない深い緑色の急須を取り出した。