怪我自体は比較的軽症で、7針ほど縫う切創。
翼が自分で縫合してくれた。
「旦那は呼ばなくていいのか?」
処理室で2人になってから聞かれた。
旦那とは公のこと。
翼はいつもそう呼ぶ、
「知らせなくていいわ。心配かけるだけだから」
怪我もたいしたことなかったし、後で話せば十分だから。
「本当にそれでいいのか?」
不満そうな顔。
だからといって無理強いしないのが、翼らしい。
「何があった?」
いつも優しい救命部長が真剣な顔で聞いてくる。
「自転車に乗った人が後ろから近づいてきて、いきなり切りつけられました」
「相手は見たのか」
「いいえ。暗かったし、いきなりで顔を見ることはできませんでした」
「そうか」
そう言って、ジーッと私の顔を見る部長。
「襲われるような心当たりはあるのか?」
チラッと翼に視線を送る。
翼の上司である部長は、私と翼が付き合っていると思っている。
そう思わせているのは私たちだけれど、騙しているような気持ちは消えない。
「紅羽、最近嫌がらせとかがあったのか?」
翼に聞かれ、
「うん。まあ・・・」
「言ってみなさい」
ちょっと怖い顔をした部長。
「実は・・・」
数日前から、無言電話が続いていて、今日は嫌がらせのビラがあったことを告白した。
「そういうことは早く言えよ」
翼は怒り出し、
部長に「警察を呼ぶぞ」と言われ、頷くしかなかった。
警察は色々と事情を聞き、 1時間ほどで帰っていった。
その後、翼が付き添っていると、
トントン。
診察室がノックされ、公が顔を出した。
「大丈夫?」
周りにいるスタッフを気にしてか、とっても優しそうな顔。
しかし、呼ばれてもいない公が顔を出せば、
「先生どうしたんですか?」
当然、看護師に聞かれしまう。
「うん。たまたま救急に呼ばれたんだ。そうしたら山形先生が運ばれたって聞いてね、お見舞い」
相変わらずいい笑顔。
あたしじゃなくて、公の方が絶対小児科医に向いている。
「俺、医局覗いてくるわ」と翼。
いつの間にか公と2人になっていた。
「大丈夫か?」
「うん」
「なんで黙ってたんだ?」
怖い顔。
「だって、心配かけると思ったし、珍しいわけでもないし」
「その油断がこの結果を招いたんだろう。しっかりしろ。何かあってからでは遅いんだぞ」
叱られた。
「ごめんなさい」
いつも強気な私が、公の前では素直になれる。
「明日は休めよ。無理すると長引くだけだからな」
「嫌よ。明日は外来の予定なの」
簡単に休むわけにはいかない。
「言うことを聞け。あいつに診断書書かせるから」
「えー」
「紅羽」
はー、この顔は決定って事ね。
家に帰りると、やはり傷口が痛み出した。
翼が処方した鎮痛剤を飲み、なんとか朝を迎えた。
朝には公が来てくれた。
「はい」
病院近くのベーカリーのパン。
「ありがとう」
当直明けの公は、この後朝からの勤務が待っている。
時間がないのにわざわざ来てくれたことが嬉しい。
「あまりゆっくりはできないんだ」
「うん」
コーヒーを入れ、 2人でパンをつまんだ。
「お前は何でも1人で抱えすぎだ」
「ごめん」
心配してくれているのが分って、素直に口をでた。
「どうして相談しないんだよ」
「まさか、怪我するとは思っていなかったし。大丈夫だと持っていたの」
「大丈夫じゃなかったな」
呆れた顔。
「だから、ごめん」
2人でいるときの公は、いつもとっても俺様。
厳しいことを言われることだって珍しくないけれど、嫌な気分ではない。
私だけが知る公だから、
フフフ。
「こら、怒られてるのに笑うな」
公は怒っているけれど、そんな公がとってもかわいい。
翼が自分で縫合してくれた。
「旦那は呼ばなくていいのか?」
処理室で2人になってから聞かれた。
旦那とは公のこと。
翼はいつもそう呼ぶ、
「知らせなくていいわ。心配かけるだけだから」
怪我もたいしたことなかったし、後で話せば十分だから。
「本当にそれでいいのか?」
不満そうな顔。
だからといって無理強いしないのが、翼らしい。
「何があった?」
いつも優しい救命部長が真剣な顔で聞いてくる。
「自転車に乗った人が後ろから近づいてきて、いきなり切りつけられました」
「相手は見たのか」
「いいえ。暗かったし、いきなりで顔を見ることはできませんでした」
「そうか」
そう言って、ジーッと私の顔を見る部長。
「襲われるような心当たりはあるのか?」
チラッと翼に視線を送る。
翼の上司である部長は、私と翼が付き合っていると思っている。
そう思わせているのは私たちだけれど、騙しているような気持ちは消えない。
「紅羽、最近嫌がらせとかがあったのか?」
翼に聞かれ、
「うん。まあ・・・」
「言ってみなさい」
ちょっと怖い顔をした部長。
「実は・・・」
数日前から、無言電話が続いていて、今日は嫌がらせのビラがあったことを告白した。
「そういうことは早く言えよ」
翼は怒り出し、
部長に「警察を呼ぶぞ」と言われ、頷くしかなかった。
警察は色々と事情を聞き、 1時間ほどで帰っていった。
その後、翼が付き添っていると、
トントン。
診察室がノックされ、公が顔を出した。
「大丈夫?」
周りにいるスタッフを気にしてか、とっても優しそうな顔。
しかし、呼ばれてもいない公が顔を出せば、
「先生どうしたんですか?」
当然、看護師に聞かれしまう。
「うん。たまたま救急に呼ばれたんだ。そうしたら山形先生が運ばれたって聞いてね、お見舞い」
相変わらずいい笑顔。
あたしじゃなくて、公の方が絶対小児科医に向いている。
「俺、医局覗いてくるわ」と翼。
いつの間にか公と2人になっていた。
「大丈夫か?」
「うん」
「なんで黙ってたんだ?」
怖い顔。
「だって、心配かけると思ったし、珍しいわけでもないし」
「その油断がこの結果を招いたんだろう。しっかりしろ。何かあってからでは遅いんだぞ」
叱られた。
「ごめんなさい」
いつも強気な私が、公の前では素直になれる。
「明日は休めよ。無理すると長引くだけだからな」
「嫌よ。明日は外来の予定なの」
簡単に休むわけにはいかない。
「言うことを聞け。あいつに診断書書かせるから」
「えー」
「紅羽」
はー、この顔は決定って事ね。
家に帰りると、やはり傷口が痛み出した。
翼が処方した鎮痛剤を飲み、なんとか朝を迎えた。
朝には公が来てくれた。
「はい」
病院近くのベーカリーのパン。
「ありがとう」
当直明けの公は、この後朝からの勤務が待っている。
時間がないのにわざわざ来てくれたことが嬉しい。
「あまりゆっくりはできないんだ」
「うん」
コーヒーを入れ、 2人でパンをつまんだ。
「お前は何でも1人で抱えすぎだ」
「ごめん」
心配してくれているのが分って、素直に口をでた。
「どうして相談しないんだよ」
「まさか、怪我するとは思っていなかったし。大丈夫だと持っていたの」
「大丈夫じゃなかったな」
呆れた顔。
「だから、ごめん」
2人でいるときの公は、いつもとっても俺様。
厳しいことを言われることだって珍しくないけれど、嫌な気分ではない。
私だけが知る公だから、
フフフ。
「こら、怒られてるのに笑うな」
公は怒っているけれど、そんな公がとってもかわいい。