丸一日、ベットの上で過ごした。

身動きもできない生活は、不便そのもの。
でも、そのお陰で出血は治まった。

回診の時間、翼が超音波で赤ちゃんを見せてくれた。

「かわいいー」
ドクドクと動き続ける心臓を見るだけで、泣きそうになった。

もう迷わない。
この子のために生きる。
そのためなら、何でもする。

私は、初めて公に電話をした。



バタッ。
大きな音をたて、ノックもなく開いたドア。
立っている公は、不機嫌そう。

黙ってベット横の椅子に座り、
「馬鹿野郎」
絞り出す声。

うれしくて、私から抱きついた。

この温もりをずっと待っていた。
私の本能が公を求めていた。


「ええー」
入ってきた看護師の絶叫。

「お、お前達」
駆けつけた救命部長も、唖然としてる。

「何してるか、聞いてもいいか?」
動揺しまくりながら、それでも事実関係を確認しようとする救命部長、さすがです。

しかし、公も落ち着いていた。

「これ、俺の嫁と子供です。お世話になりました」
頭を下げる。

「こ、公」
金魚のように口をパクパクさせて、私は名前を呼んだ。

ダメだよ。
変な噂が立っちゃう。

「あれ、来たんですか?」
翼の声。
「世話になったな」
「ずっと世話しても良いんですけれどね」
「いや、必要ない。もう、手放す気はない」

「・・・」
この会話から1人残されてしまった私。

病室の入り口で唖然としている救命部長と看護師。

きっと、明日には病院中に知れ渡るだろう公と私の関係。
うれしいような、恥ずかしいような・・・でも、幸せな気分。