「ただいま」
家に帰り、自分の部屋のリビングで、ソファーに倒れ込む。

「おーい、酔い覚まし飲めよ」
玄関から翼の声がする。
「はーい」

冷蔵庫から翼のお母さんが送ってくれた漢方を取り出して、
うわー、これ苦手なのよね。
でも、明日の勤務のことを考えれば、
ゴックン。
苦っ。
ありがたいと思っていただきます。

「なあ紅羽、お前明日日勤だろー」
またまた階段下から大きな声。

ッたく、うるさい。
でも、勝手に入ってこないのが翼。
あくまでもシェアハウスなんだから。
必要以上に干渉したり、勝手に入ってくる事はしない。

「そうよ。だから寝るの。うるさいわねっ」
「母さんがパン買ってきてるから、食えよ」
へ?

言われてドアを開け、2階に上がったところにある踊り場スペース。
本当だ、紙袋にパンがぎっしり入っている。

いつもありがとうございます。
お母さんは誰が食べているか知らないんだろうけれど・・・
申し訳ないようで、とってもありがたい。

「ありがとう、いただきます。お母さんにお礼言ってね」
「ああ」
おやすみ。


世間では、とは言っても同期や仲のいい友人の親しいごく一部だけれど、私たちが付き合っていると思っている。
飲み会も一緒に出かけるし、仕事で困ったときにはやはり翼に相談してしまう。
誰が見ても私たちは恋人同士に見えるんだと思う。
でも、違うんだなあ。
本当は、翼の女よけ。
それだけの存在でしかない。

世間の常識的にこの関係が正しいのかどうかは別にして、私も翼も今の状態に満足している。
でなければ、大学時代から数えて7年以上もこんな生活を続けたりはしない。


うーん、ほどよく回ったお酒が気持ちいい。
午後11時か。
これで明日が元気なら文句無しなんだけれど。

ピコン。
『ちゃんと帰ったか?』
毎日この時間にやってくるメール。
私はイエスのスタンプを返信した。

『明日勤務だろ、早く寝るんだぞ』
『分っています』
『ならいい。お休み』
『お休みなさい。当直頑張って』
これが、毎晩の日課。

実は、私には付き合って2年になる彼がいる。