「カンパーイ」
盛り上がる店内。
ここは最近評判のレストラン。
なかなか予約が取れないって噂なのに、誰かがコネを使ったのね。
「おーい、ビールおかわり」
「こっちはハイボール」
「すいませーん、注文お願いしまーす」
色んな所から声が上がる
「はーい、お待ちください」
店員さんも忙しそう。
きっと予約を受けたことを後悔しているはず。
そんな中、相変わらず大騒ぎしている若者達。
一気飲みや、訳のわからないゲームまで。
パッと見は、大学生にしか見えないけれど・・・
「これでも医者なのよねー」
呆れた声が聞こえてきた。
「あんたもね」
ガブガブと酒を飲んでいる夏美に突っ込みを入れた。
「紅羽(くれは)、顔真っ赤よ」
自分は全く顔に出さない夏美が、笑ってる。
「あんたとは違うの。一体どれだ強いのよ」
私だって弱い方ではないんだけどね、夏美が強すぎるのよ。
勤務後、夕方7時から始まった飲み会。
すでに1時間以上がたち、みんなそれなりに酔っ払ってきている。
当然、私も夏美もかなり飲んでいる。
「こらー、元樹と真一郎には絶対に飲ませるなよ」
遠くの方から、幹事の良太が止めている。
そういえば2人は待機だった。
そりゃあ、飲ませたらまずいわ。
私、山形紅羽(やまがたくれは)は27歳の小児科医。
やっと研修医の肩書きがとれて、医師として歩き出したばかり。
今日は同じ大学の同期で、付属病院に就職したメンバーとの飲み会。
夏美は大学の同期で、私と同じ小児科医。
本当はお金持ち開業医の娘なのに、チョー現実主義者。
今だって、
「もったいないから、ほら飲みなさい」
良い所のお嬢さんとは思えない発言を繰り返す。
「ほんと、黙っていれば美人なのにね」
「紅羽、やかましい」
あら、聞こえてた。
「こら紅羽、飲み過ぎだぞ」
どこからともなく現れた翼が注意する。
「はいはい、分ってます」
福井翼(ふくいつばさ)は大学から同級生。
今は救命医として勤務している。
見た目は雑誌から飛び出てきたような、THE王子様。
顔が良くて、頭が良く、それで性格の良い奴ならモテないはずがない。
当然、学生時代からかわいそうなくらい目立っていた。
気がつけば、いわれのない嫉妬や、ストーカーまがいのつきまといまで現れた。
「飲み過ぎるな。介抱なんてごめんだからな」
耳元に口を寄せ、小声でささやく。
ッたく、不必要なまでにいい男。
ここまでくると、嫌みよね。
「分っているわよ。自分で足でちゃんと帰ります。ご心配なく」
フン。
本当は私の方がお酒強いのに。
「ごちそうさま」
夏美の呟き。
「はいはい、お粗末様」
フッ、笑ってしまった。
元々、翼はモテていたんだと思う。
でも、その翼が医学生になりさらに注目を浴びた。
本人は何をしたわけでもないのに、日に日に外野がうるさくなっていき、危うくファンクラブができそうになった。
そんなとき、危機感を感じた翼が提案を持ちかけてきた。
「ねえ紅羽、俺の彼女にならない?」
「はあ?」
本当に、は?としか言葉が出なかった。
私たちは友達でしかなかったのだから。
「ああ、もちろんフリだよフリ」
「彼女のフリって事?」
「そう」
当たり前のようにいってくれるけれど、おかしいよ。
翼が持ちかけた提案は、
「一軒家の賃貸を借りてるんだ。玄関は一つだけれど、メゾネット式の一階を俺が俺二階をお前が使えば良い。お風呂もキッチンもそれぞれある。もちろん干渉はしない。でも、知らない人が見れば一緒に住んでいるように見える。もちろん家賃は俺が払う。わざわざ言いふらす気はない」
助けてくれないかと、頭を下げられた。
それから7年。
私と翼は恋人のフリを続けている。
とは言え、知っているのはごくわずかだけれど。
「ほら、帰るぞ」
「ええ、お開き?」
まだみんな騒いでいるのに。
「明日も勤務だろ?」
「まあね」
この辺が潮時かも。
「あーあ、また馬鹿騒ぎ」
夏美が呆れてる。
いくら貸し切りとは言え、ここまでの大騒ぎで店の人は迷惑そう。
真面目な良太が、1人ペコペコしてる。
「さー、二次会行くぞ」
声が上がり、店の外にはすでに女の子の姿が。
ああ、よく見ると病院のスタッフ。
みんなすごくおしゃれしてる。
「次行くぞ」
何人かが声をかけて回っている。
確かに医者の飲み会なんて、男性比率が異常に高い。
それに、強い女が多いし。
普通の女の子呼んだ方が楽しいものね。
「紅羽は次行くの?」
女子だけの二次会を企画しているらしい夏美が、聞いてくれたけれど、
「ごめん、帰るわ」
「分った、また明日ね」
バイバイと手を振った。
外に出ると、すでに女の子の肩に手をかけている男子たち。
「あれ、彩香ちゃん。今日はかわいいね」
酒のせいでスキンシップもエスカレート気味。
「お前達、調子に乗るな。セクハラだぞ」
良太が1人で怒ってた。
盛り上がる店内。
ここは最近評判のレストラン。
なかなか予約が取れないって噂なのに、誰かがコネを使ったのね。
「おーい、ビールおかわり」
「こっちはハイボール」
「すいませーん、注文お願いしまーす」
色んな所から声が上がる
「はーい、お待ちください」
店員さんも忙しそう。
きっと予約を受けたことを後悔しているはず。
そんな中、相変わらず大騒ぎしている若者達。
一気飲みや、訳のわからないゲームまで。
パッと見は、大学生にしか見えないけれど・・・
「これでも医者なのよねー」
呆れた声が聞こえてきた。
「あんたもね」
ガブガブと酒を飲んでいる夏美に突っ込みを入れた。
「紅羽(くれは)、顔真っ赤よ」
自分は全く顔に出さない夏美が、笑ってる。
「あんたとは違うの。一体どれだ強いのよ」
私だって弱い方ではないんだけどね、夏美が強すぎるのよ。
勤務後、夕方7時から始まった飲み会。
すでに1時間以上がたち、みんなそれなりに酔っ払ってきている。
当然、私も夏美もかなり飲んでいる。
「こらー、元樹と真一郎には絶対に飲ませるなよ」
遠くの方から、幹事の良太が止めている。
そういえば2人は待機だった。
そりゃあ、飲ませたらまずいわ。
私、山形紅羽(やまがたくれは)は27歳の小児科医。
やっと研修医の肩書きがとれて、医師として歩き出したばかり。
今日は同じ大学の同期で、付属病院に就職したメンバーとの飲み会。
夏美は大学の同期で、私と同じ小児科医。
本当はお金持ち開業医の娘なのに、チョー現実主義者。
今だって、
「もったいないから、ほら飲みなさい」
良い所のお嬢さんとは思えない発言を繰り返す。
「ほんと、黙っていれば美人なのにね」
「紅羽、やかましい」
あら、聞こえてた。
「こら紅羽、飲み過ぎだぞ」
どこからともなく現れた翼が注意する。
「はいはい、分ってます」
福井翼(ふくいつばさ)は大学から同級生。
今は救命医として勤務している。
見た目は雑誌から飛び出てきたような、THE王子様。
顔が良くて、頭が良く、それで性格の良い奴ならモテないはずがない。
当然、学生時代からかわいそうなくらい目立っていた。
気がつけば、いわれのない嫉妬や、ストーカーまがいのつきまといまで現れた。
「飲み過ぎるな。介抱なんてごめんだからな」
耳元に口を寄せ、小声でささやく。
ッたく、不必要なまでにいい男。
ここまでくると、嫌みよね。
「分っているわよ。自分で足でちゃんと帰ります。ご心配なく」
フン。
本当は私の方がお酒強いのに。
「ごちそうさま」
夏美の呟き。
「はいはい、お粗末様」
フッ、笑ってしまった。
元々、翼はモテていたんだと思う。
でも、その翼が医学生になりさらに注目を浴びた。
本人は何をしたわけでもないのに、日に日に外野がうるさくなっていき、危うくファンクラブができそうになった。
そんなとき、危機感を感じた翼が提案を持ちかけてきた。
「ねえ紅羽、俺の彼女にならない?」
「はあ?」
本当に、は?としか言葉が出なかった。
私たちは友達でしかなかったのだから。
「ああ、もちろんフリだよフリ」
「彼女のフリって事?」
「そう」
当たり前のようにいってくれるけれど、おかしいよ。
翼が持ちかけた提案は、
「一軒家の賃貸を借りてるんだ。玄関は一つだけれど、メゾネット式の一階を俺が俺二階をお前が使えば良い。お風呂もキッチンもそれぞれある。もちろん干渉はしない。でも、知らない人が見れば一緒に住んでいるように見える。もちろん家賃は俺が払う。わざわざ言いふらす気はない」
助けてくれないかと、頭を下げられた。
それから7年。
私と翼は恋人のフリを続けている。
とは言え、知っているのはごくわずかだけれど。
「ほら、帰るぞ」
「ええ、お開き?」
まだみんな騒いでいるのに。
「明日も勤務だろ?」
「まあね」
この辺が潮時かも。
「あーあ、また馬鹿騒ぎ」
夏美が呆れてる。
いくら貸し切りとは言え、ここまでの大騒ぎで店の人は迷惑そう。
真面目な良太が、1人ペコペコしてる。
「さー、二次会行くぞ」
声が上がり、店の外にはすでに女の子の姿が。
ああ、よく見ると病院のスタッフ。
みんなすごくおしゃれしてる。
「次行くぞ」
何人かが声をかけて回っている。
確かに医者の飲み会なんて、男性比率が異常に高い。
それに、強い女が多いし。
普通の女の子呼んだ方が楽しいものね。
「紅羽は次行くの?」
女子だけの二次会を企画しているらしい夏美が、聞いてくれたけれど、
「ごめん、帰るわ」
「分った、また明日ね」
バイバイと手を振った。
外に出ると、すでに女の子の肩に手をかけている男子たち。
「あれ、彩香ちゃん。今日はかわいいね」
酒のせいでスキンシップもエスカレート気味。
「お前達、調子に乗るな。セクハラだぞ」
良太が1人で怒ってた。