するとデジカメの電源を切りながら
「俺が言いたいのは、そういう事ではない。
いいのではないか?
親子に見えた方がお互い楽しそうで」と
言ってポケットに入れていた。

えっ……?

「ほら次行くぞ。次
早く回らないと日が暮れる」

「は、はい。」

先生は、そう言うと車椅子を押してきた。
なら、どういう意味なのだろうか?
先生は、私と睦月君が親子に見えるのは、
嫌ではないという事かしら?じゃあ先生は……?

私は、不思議に思いながらもあちらこちらに行き
楽しんだ。たくさん乗れたし水族館にも行けた。
夜のディナーも凄く美味しかったし
こんなに楽しんだのは、いつぶりだろうか?

帰り道。あまりにも遊び疲れて私も睦月君も
車の中で眠ってしまった。
夢の中でもペンギンランドの夢を見る。しかし
そばに居るのは、私ではない。

先生と睦月君と……そして奥さんだった。
絵に描いたような幸せそうな家族の光景だった。
私は、遠くからそれを見てるだけ
これが本来あるべき姿なのだろう。
だから余計に悲しかった。
私が望む光景は……幻に思えて

「……おい。小野木」

遠くから先生の声が聞こえてきた。
これも……幻?

「起きろ。小野木!!」

肩を揺すられてハッと目が覚めた。
いつの間にか車内で眠ってしまったらしい。
先生は、助手席のドアを開けて立っていた。

「やっと起きたか……お前。いつまで寝てるんだよ?
ほら、着いたぞ」

「す、すみません……」

あ、あっちが夢か……。
あまりにも夢に出てきそうな出来事だったから
どっちが幻が分からなくなっていた。
いや、夢で良かったけど……。