「睦月君。オレンジジュースと
リンゴジュースならどちらがいい?」
そう言って紙パックを睦月に見せた。
そうするとオレンジジュースの方を指を指して
答えてくれる。何となくだけど、コツを掴んだかも。
「じゃあ、今用意するから
向こうで待っててくれるかな?」
そう言うと睦月君は、コクリと頷き
向こうのテーブルの方に行ってしまった。
確かに聞き分けのいい子だわ。
私は、お皿とコップを取り出し用意をした。
オレンジジュースを睦月君用の小さな
コップを注ぎながら
「しかし、変わった子だわ……」と思った。
言語障害がある訳ではない。初めて会った時は、
ハッキリした口調で自己紹介してくれたし
人見知りではないと聞いている。
人と会話をするのが嫌いだからしないって
そんな理由がある訳なの?
子供好きだけど、こういう子を見たのは、
初めてなので正直どう接していいか悩んでしまう。
この子のギャップも凄過ぎる……。
これで仲良くやれるだろうか?不安だなぁ……。
モヤモヤと考えていたら注いでいたオレンジジュースが
コップから溢れて出してしまった
「あージュースが!?」
慌ててやめて布巾を取ろうと手を伸ばした。
だが、逆に紙パックのリンゴジュースの方が
手に当たり床に落ちてベタベタになってしまった。
「キャアッ!?ど、どうしよう。
とにかく床を拭かなくちゃあ!!」
布巾…いや雑巾が必要だわ。
慌ててシンクに行こうとしたら今度は、椅子に
引っかかり躓いてコケてしまう。
そうしたら勢いで棚にあったヤカンや鍋などが
落ちてしまい凄い音で転がった。
カラン…カラン……と蓋が転がる。
痛い…し、どうしよう!?
何だかまた、やらかしてしまった。
あぁ、また怒られる…。
するとガチャッとドアが開くと先生が入ってきた。
しかも怒りながら……。
「おい、何やっているんだ!?」