「おい。睦月!?」
先生がもう一度名前を呼ぶが知らん顔。
涙は、まだポロポロ泣いていた。
私は、それを見てオロオロしてしまう。
こんな事は、初めての事でどうしたらいいか分からない。
どうして?
いや、それよりも…怒っているの?
「藤崎。どうするんだよ?」
浜野さんがそう言うと先生は、ハァッ…と
深いため息を吐いた。先生まで!?
親子揃ってため息を吐かれるから余計に戸惑った。
「……ったく、分かった。こんな所で話した俺らが悪い。
小野木にちゃんと謝るから機嫌を直せ。
おら、こっちに来い。睦月」
先生は、そう言ってもう一度手を差し伸べた。
えっ……?私に謝ってくれる?
そうしたら納得したのか睦月君は、その手を受け取り
先生のところに。
ひょいと抱き上げられるとしがみついていた。
先生は、ため息混じりに背中をポンポンと叩きあやした。
「まったく。世話の焼ける奴だ。
小野木も悪かったな」
「あ、いえ……こちらこそ。すみませんでした」
私は、慌てて否定して謝ったが
自分でもどうしたらいいか戸惑ってしまった。
睦月君の泣き顔を見たら泣けなくなってしまったし
この微妙な空気をどうしたらいいのだろうか?
すると浜野さんが私に
「涼花ちゃん。悪い…話をふったのは、俺だ。
藤崎は、涼花ちゃんに聞かせるつもりなんて無かったんだ。
だから、すまない」と言って私に謝罪してきた。
「…はい。分かっています」
割り切れてないのは、自分自身だ。
勝手にショックを受けて落ち込んでいるだけ
自分は、先生の彼女でも何でもないのに……。
睦月君は、そんな私を早く気づき
泣かないように気を遣ってくれたのだろう。
お陰で泣かずに済んだ。強くならなくちゃあ…もっと。
迷惑をかけないように……。