「……まぁな。アイツの大食と行動には、
よく驚かされたもんだ」
そう言った先生の声は、何だか優しい声だった。
とても可愛らしい奥さんだったのだろう。
2人の会話を聞いていても分かる。
仲のいい夫婦だったのだろうと…それもそうよね。
先生と奥さんだもの。
泣きたい気持ちを我慢しながら下を向くとえっ!?
私を押していたはずの睦月君が
涙をポロポロとこぼれて泣いていた。
「ちょっ睦月君!?」
私は、驚いて声を出してしまう。
すると先生と浜野さんが声に気づかれてしまった。
ドアを開けられてしまう。
私は、慌てて睦月君を抱っこした。
「お前ら何をやってんだ?」
「あ、あの……すみません。
盗み聞きするつもりはなかったのですが」
「盗み聞きって…っておい。
何で睦月が泣いているんだ!?」
「あの…それは、私もサッパリ分かりません」
先生が睦月君が泣いている事に気づいて聞いてきたので
自分も分からないと答えた。
なぜ私より睦月君が泣いているのだろう?
ギュッとしがみついて離れない。
驚いて自分が泣く所ではなくなってしまった。
えっ?泣けない…。
まさか…私の代わりに泣いてくれたの?
私が泣かないように。すると先生が
「意味が分からねぇーが。
とにかく、こっちに来い。睦月」
そう言いこっちに来るように言う。
手を伸ばすが睦月君は、そっぽを向いてしまった。
そのまま私にしがみついてくる。
先生の抱っこを拒否るなんて初めての事だ。
どうして…?
それに対して浜野さんも驚いていた。
「おい。マジかよ?藤崎の抱っこを拒否るなんて」