どう返事を返せばいいか悩んでしまった。
すると着替え終わった睦月君は、部屋から
出て行ってしまう。あっ!?
私も慌てて追いかける。
睦月君は、濡れた服を洗濯機に放り込んだ。
あぁ、洗濯物を入れたかったのか。
相変わらずいい子だ。
そしてリビングの方に向かった。
だが途中Uターンしてしまう睦月君。えぇっ!?
「どうしたの?睦月君…入らないの?」
目の前にドアがあるのにどうしたのだろうか?
睦月君は、ジタバタと押してくる。
ちょっ……睦月君?
「どうしたの?今度は…」
そう聞こうとしたらリビングの方から
話し声が聞こえてきた。先生と浜野さんの声だ。
えっ……?
丁度、先生と浜野さんが奥さんの事で話している
最中だった。私は、驚いて立ち止まった。
「睦月はさ。沙織ちゃんのこと覚えていないから
ついでに聞かしてやろうと思ったんだぜ?
いい機会だと思ったからさ。なのに怒るし…」
「お前なぁ…そういうのは、時期を見て
俺が話すからいいんだよ。余計な事はするな!」
「え~何で?そもそも藤崎がまともに話せるのかよ?
絶対途中で照れてやめるだろ。
話すならバレンタイン事件とか話せよ?」
「なっお前…まだ覚えているのかよ!?」
慌てたような声を出す先生だった。
バレンタイン事件?
一生懸命押してくる睦月君には、悪いけど
その話を立ち聞きしてしまう。
ダメだと分かっているのに身体が動かない。
「そりゃあ、忘れろと言う方が無理じゃねぇ?
沙織ちゃん。藤崎が他の女性から貰った大量のチョコを
1人で全部完食しちゃうんだぜ?
しかも、誤って自分が渡すはずだったチョコまで
食べちゃって……もう大爆笑でさ」
「あれは…沙織のヤキモチでやった行動だ。
まぁ、本気で全部食べきるとは、思わなかったが」
「でもさ、明らかに途中で藤崎の事を忘れて
チョコに夢中になっていたぜ。
『このチョコ美味しい~』とか言ってたし。
沙織ちゃんって見た目は、上品なお嬢様っぽいけど
ちょっと抜けていたよな。
また、そこが可愛らしかったけど」