戸惑うが睦月君のお誘いに乗り泊まることにした。
本当にいいのだろうか? 
私は、睦月君をトイレに連れて行くと
一緒に寝ることにした。彼のベッドだと小さいので
さっき使わせてもらったゲストルームで寝ることに。

一緒にベッドの布団に潜り込むと
睦月君をポンポンとあやしながら私は、
ずっと先生のことを考えていた。
あんな綺麗で素敵な奥さんなら忘れられないのも
無理はない。叶わない恋。
先生が独身だったら
少しは……私にもチャンスがあったのだろうか?
いや、あれだけ失敗したら無理な話か。

「……睦月君。何でこうも上手くいかないのだろうね?
恋も人生も」

思わず睦月君に愚痴をこぼしてしまう。
幼い睦月君に言っても仕方がないのに
睦月君のお母さんに対して羨ましがっているし。

「……そもそも人生が全て上手くいっている人の方が
居ないと思うよ?
山があったり谷があったりするから人生なんだよ!」

すると睦月君から思わない解答が返ってきた。
えっ……!?
驚いていた睦月君を見る。
幼児だと思えないほどの正論だった。

「でも……私は、失敗ばかり。
睦月君のママみたいにはなれない……」

「……ママになる必要性ってあるの?お姉ちゃん。
お姉ちゃんは、お姉ちゃんでしょ?
無理に合わせたらお姉ちゃんじゃなくなるよ?
いいんだよ……そのままで。
僕……そのままのお姉ちゃんだから……」

そう言いながらスヤスヤと眠りだす睦月君。
ちょっ……睦月君!?その後の言葉が聞きたかった。
スヤスヤと気持ち良さそうに眠ってしまった。
寝顔は、まだまだ幼い4歳児なのに
随分と大人っぽい考え方を持っている。

「そのままの私でいいか……」

クスッと微笑んだ。ありがとう……睦月君。
幼い睦月君に励まされてしまった。
でも、そのお陰で少し気持ちが晴れていく。
チュッとおでこにキスをすると私も眠りについた。
しかし私は、気づかなかった。
先生が、こっそりと部屋を覗きに来ていたことを……。

「……母親か……」

そう言いながら切なそうに見ていたことに……。