「美味しい……です」
「……そうか。うむ。味は、まぁまぁだな。
やれば出来るではないか。小野木」
先生がハンバーグを食べながら言った。
その瞬間涙が溢れてきた。美味しいからとか
褒められたからとかではなくて
自分が情けなくなったからだ。
自分がドジで出来ないのを知っていたが
まさか、こんなにも差をつけられるなんて。
先生の奥さんならこんな失敗なんかしなかっただろうとか
そんな風に思うと余計に情けなくなった。
何処かで奥さんに嫉妬しているのかもしれない。
「何で泣くんだよ?まったく。
よく分からない奴だ」
すると先生は、そう言いながら私を抱き締めてくれた。
うぅっ……余計に涙が溢れてきた。
先生の温かさと優しさに胸が締め付けられそうだった。
しばらく先生の胸元で泣いていたら
泣き疲れたのかどうやら眠ってしまっていた。
ハッと気づくとベッドの上で眠っていた。
「えっ?私……寝ちゃった!?」
慌てて起き上がるとリビングの方に向かう。
すると……ドアの隙間から先生の姿が見えた。
ソファーのところで切なそうに何かを見ていた。
先生……?何を見ているのだろうか?
見ているドアの音で先生が気づいてしまう。
慌てて何かを隠した。あれは……写真?
「起きたのか……」
「あの……すみません。泣いた上に寝てしまって」
私は、必死になって頭を下げた。
すると先生は、何も言わずに立ち上がった。
怒っているのだろうか?そう思っていたら
「起きたのなら酒に付き合え。飲めるか?」と
私に聞いてきた。
「えっ?は、はい。強くはありませんが」
慌てて言うと先生は、それ以上何も言わず
キッチンに向かって行ってしまった。
テーブルの方に目を向けるとワインとパソコンが
置いてあった。