慌てて先生は、火を止めると私の腕を引っ張り
シンクのところに連れて行き水道水で手を冷やした。
うぅっ……まさかの心配をするなんて
情けなさで涙が溢れてくる。

「ふぅ~まったく。フライパンに触るヤツがあるか。
大したことにならなかったからいいものの……」

「す、すみません……」

結局、迷惑をかけてしまった。
役に立ちたかっただけなのに……。
しゅんとさらに落ち込んでいると睦月君が
ツンツンと先生のズボンを引っ張ってきた。
先生が見下ろすと

「パパ。お姉ちゃん……大丈夫?
お姉ちゃん頑張ったんだよ。怒らないであげて」

そう言って私を庇ってくれた。
睦月君……。
すると先生は、睦月君の頭を撫でた。

「別に……怒っていない。呆れているが」

ガーン!!
それは、それでショックだった。
余計にしゅんと落ち込む。すると先生は、

「だが、睦月の成長が見えたのは、小野木のお陰だ。
それにまだ、ハンバーグを失敗した訳ではない。
諦める必要もないぞ」

「えっ……?それって?」

私は、驚いて聞き返した。
先生は、私を手当てをした後
ささっと手早く何かを作り始めた。
出来上がったのは、煮込みハンバーグだった。
凄い……これだと焦げたところも目立たないし
むしろ、さらに美味しそうだ。

「凄い……普通のハンバーグが煮込み
ハンバーグになるなんて!?」

「これなら、あまり焦げた部分も目立たないだろう。
味は知らんが……」

フライパンを水につけながら言う先生。
いやいや、失敗を違う風に
再現が出来る先生に感服する。
睦月君も嬉しいのか手をパチパチと叩いていた。
他にもサラダなどを作ってくれた。

スプーンで、すくい食べてみると……少し苦味もあるが
とても美味しく出来上がっていた。
これは、煮込んだからだろうか……?