「おい。何固まっているんだ?
人の話を聞いてんのか?
今から出かけるからお前も一緒に来い」

「えっ?何を言ってるのですか!?
げ、原稿は?まだ貰ってませんが」

「そんなのは後にしろ。今から
幼稚園に息子を迎えに行かないとならないんだ」

幼稚園?あぁ、そうか。
もうそろそろお迎えの時間だったわ。
しかしこちらも早く原稿を貰わないといけないのに…。
そうだ。なら私が……。

「そ、それなら私が迎えに行ってきます!
先生は、そのまま仕事の方を優先して下さい」

「アホか。急に見ず知らずの奴が迎えに来ても
帰してくれる訳がねぇーだろ!?
通報されたいのか?」

しかし呆れたようにツッコまれた。ガーン!!
ううっ……確かにそうだ。
変な不審者が多いご時世に見ず知らずの人が
迎えに来ても帰してくれる訳がないわ。
むしろ通報されるのが関の山。

「分かったのなら来い。ついでに紹介してやる」

「は、はい。あ、これ有名店のケーキです。
良かったら後で食べて下さい」

「あぁ、すまないな。ってか早く渡せよ!
あぁ時間がねぇ……これ置いたらすぐに行くぞ」

ケーキを受け取りお礼を言われたが
すぐに怒られてしまった。
差し入れをして怒られるのは、私ぐらいだろうか?
何だか納得がいかないが仕方がない。

結局、幼稚園のお迎えを一緒に同行させてもらうことになった。
うぅっ…予定が狂ってしまう。
次のスケジュールには、幼稚園のお迎えも入れておかないと

前を歩く先生を見つめる。
どう考えても小説家には見えない。
外見は、やっぱりイケメン・ロッカーという感じだわ。
凄く似合ってるけど…あまりのギャップの違いに
驚いてしまった。それにかなりの毒舌だったし。
正直怖い…。
上手くやって行けるか不安になっていく。

幼稚園には、徒歩10分ぐらいで着いてしまった。
思ったより近いようだ。園を歩けばママさん達が
チラチラと頬を染めながら先生を見ている。
これだけイケメンなら無理もないわよね。
校舎に入り廊下を歩いていると若い保母さんが
話しかけてきた。

「あ、藤崎さん。こんにちは。
あら、そちらの方は?」