「どちらもよく知っているからね。
蓮見先生とは、かれこれ彼がデビューして
4年になろうとしてるかな?
先生は、作家としてストイックだから
中途半端なやり方を嫌う。それに報道陣とか
しつこいのは、嫌うしな」

「でも、勿体無くありませんか?
あれぐらいの美形なら顔を出したら
もっと女性ファンが増えるのに……」

そうなれば、先生の素晴らしい作品がもっと
注目されるのに。
そうしたら河合先輩は、クスクスと笑ってきた。

「相変わらず正直な意見だな。小野木は…」

正直な意見……?
私ったらまた余計な事を言っちゃった!?
河合先輩に笑われてしまい不安になる。

「確かに勿体無いと俺も思うよ。
だけどそれは、先生の作品に対しての強い想いでもあり
息子の睦月君のためでもあるんだ!
下手に報道陣が、うろつかれるとプライベートで
かなり支障が出るし睦月君に被害が及ぶからね。
それに、ほら先生って見た目的に小説家っぽくないでしょ?」

河合先輩の言葉に驚かされた。
だがすぐに納得した。
確かに先生は、小説家っぽくない。見た目は、
どちらかと言うとイケメンロッカーだ。

「確かに…私も最初お会いした時に
部屋を間違えたのかと思いました」

「実は、俺も最初お会いした時に驚いたんだよね。
先生の知っている人は、好意的だからいいだろうけど
世間は、いい風に見ない人も居る。 
下手したらゴーストライター居るのではないかとか
疑う人も出てくるだろうからね」

その言葉を聞いた時ハッとした。
確かに。何も知らない人は、そうやって
疑う人も居るかも知れない。
私だって、一般読者の立場なら最初は、驚くし
そんな噂が立てばショックも大きい。

「まぁ、先生の話だと作家に見られないのは、
今始まった事ではないし言いたい奴に言わしておけば
いいと言っていたけど
先生が一番気にかけるのは、それをよく思わない人達の
陰口で睦月君が傷つくことだ」

私は、何も言えなくなってしまう。
先生は、睦月君の事を想って表に出てこないのだと知る。
それは、先生の睦月君に対する愛情だと知り
返す言葉もでなかった。

ファンとして、もっと前に出てきて欲しいと思う反面。
このまま出ない方があの親子のために
なるのではないかとも思ってしまう。難しい選択だ。
色々考え過ぎて沈んでしまう。
そうしたら河合先輩は、ニコッと微笑んでいた。

「編集者としたらサイン会に出席してもらった方が
利益になるけど、それだけではないと思うんだ。
作家が居てそれを支える編集者が居るからこそ
1冊の素晴らしい作品が出来るのだと思うよ。
君なら蓮見先生といい関係を築けると思うから頑張って」