「まぁ……今日の礼だ」

そう言うとニヤリと笑った。お礼……!?
ドキドキとしながらおでこに触れる。嬉しい……。
一瞬だったから、もう一度キスをして欲しいと思った。

「あの……もう一度お願いします」

「アホ。礼なんだから
一度きりに決まってるだろ。調子に乗るな」

「え~そんなことを言わずに……」

呆れて言う先生に私は、必死になる。
するとその時だった。ある視線に気づいた。
チラッと見てみると睦月君と白雪がジッと見つめていた。
ハッとする。いけない、睦月君が見ているのに……。
睦月君は、白雪を抱っこしながらくるりと
向きをかえた。

「白雪。僕達は、部屋に戻ってよっか……」

「えっ?ちょっと……睦月君!?」

そんな気遣いいいから……。
すると睦月君は、こちらを向くと
「こういう時って大人の人は、子供に
何を言うか知っている?」と聞いてきた。

「えっ?」

「何て言うんだ?」

「こういう時は……“子供は、早く寝ろ”って
言うんだよ!」

さらりと真顔で言う睦月君。えぇっ~!?
睦月君のまさかの気遣い方に驚いてしまう。
いやいや。睦月君……そんなこと何処で覚えたの!?

「どこで覚えたんだ?そんなこと……」

「睦月君。そんな気遣いは、しなくても大丈夫よ~?
ほら、まだケーキ食べてないし一緒に食べましょ?」

「大丈夫だよ。僕、今日は、
白雪と一緒に寝るし。ねぇ、白雪?」

白雪は、「ニャー」と鳴いていた。
いやいや、睦月君。私と先生は、慌てて止めた。
何とも賑やかで騒がしい誕生日パーティーになったのだった。