「俺は、誕生日になんて興味がないし
祝われてもこれっぽっちも嬉しくねぇ。むしろ迷惑だ!
二度と俺の聞こえる範囲で
誕生日の話をするんじゃねぇーぞ!?分かったな」

「は、はい!」

あまりの怖さで声が裏返ってしまった。
「まったく……」と先生は、呆れたように
ため息を吐くとキッチンの方に行ってしまった。
私は、余計な事をしてしまったのだろうか?
でも……。

するとまたスマホが鳴り出した。
浜野さんからだ。先生が見てるから出れないし
迷っていると睦月君がギュッと服の裾を握ってきた。
私は、ギュッと睦月君を抱き締めた。

それから先生が用意してくれた昼食を食べながら
ずっと考えていた。
先生は、今でも奥さんの死を気にしている。
自分をせめて……。本当にこのままでいいのだろうか?
せっかくの誕生日を悲しみのまま終わらせてたくない。

奥さんだってそんなの望んでないはず
もっと先生には、前を見てほしい。
そのためにも私が動かなくちゃあ…!!

ご飯を食べ終わった後。
先生が片付けて部屋に行ったのを確認すると睦月君に
ある事を提案してみた。

「睦月君は、パパの誕生日お祝いしたくない?」

すると睦月君は、コクリと連続で頷いてくれた。
やっぱりお祝いしたいよね……睦月君だって。
そうだよね。大好きなパパだもん。

「よし。なら、パパに内緒で
サプライズパーティーをしてパパを驚かせようか?」

怒るかも知れないけど何かをしないと変わらないのなら
私がそのきっかけになりたい。
先生が、笑顔で居られるように……。

「僕、パパの似顔絵描く」

「パパきっと喜ぶね」

睦月君がそう言ってきた。似顔絵か……。
ニコッと微笑むと頭を撫でてあげた。